遺産分割協議書は本当に必要?作成するメリットと注意点を解説

遺産分割協議書は本当に必要?作成するメリットと注意点を解説

相続について調べていると、「遺産分割協議書」という言葉を目にする機会があるのではないでしょうか。

相続手続きに関する解説では頻繁に登場する書類ですが、「必ず作成しなければならないのか」「作成しないとどうなるのか」までは分かりにくいものです。

遺産分割協議書は、不動産の名義変更や金融機関での相続手続きなどで重要な役割を果たします。一方で、金融機関によっては別の方法で手続きできる場合もあります。

しかし、後日のトラブル防止という観点からは、できるだけ早い段階で作成しておくことが望ましいでしょう。

今回は、遺産分割協議書の役割や必要となる場面、作成するメリット、注意点について解説します。


遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、相続人全員で話し合いを行い、

「誰がどの財産を取得するのか」

を文書にまとめたものです。

例えば、

  • 長男が自宅不動産を取得する
  • 長女が預貯金を取得する
  • 株式を特定の相続人が取得する

といった内容を記載します。

相続人全員が内容に同意し、署名のうえ実印を押印し、印鑑証明書を添付することで、各種相続手続きに利用される書類となります。

なお、海外に居住している相続人については、居住国で発行される署名証明書(サイン証明)やこれに準ずる書類によって対応することがあります。


遺産分割協議書を作る前に財産調査が重要

遺産分割協議書を作成する前に、まずは相続財産を把握することが大切です。

実際の相続では、

  • 使用していない預金口座が見つかる
  • 証券口座が見つかる
  • 未登記建物が見つかる
  • ゴルフ会員権などの財産が見つかる

といったケースがあります。

遺産分割協議が終わった後に新たな財産が見つかると、追加で協議が必要になることもあります。

そのため、可能な限り財産調査を行ったうえで遺産分割協議を進めることが重要です。


不動産の相続では遺産分割協議書が重要

相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果に基づいて不動産の相続登記を行う場合には、通常、遺産分割協議書が必要となります。

また、令和6年4月から相続登記が義務化されています。

さらに、古い建物の中には法務局で登記されていない「未登記建物」が存在することがあります。

固定資産税を支払っているため所有していることは間違いなくても、法務局に登記記録が存在しないケースです。

このような未登記建物も相続財産に含まれるため、後日のトラブル防止の観点から、遺産分割協議書に記載しておくことが望ましいでしょう。

特に古くから所有している住宅や倉庫、農作業小屋などは注意が必要です。


遺言書があっても遺産分割協議が行われる場合がある

「遺言書があるなら、その内容どおりにしか相続できないのでは?」

と思われる方も少なくありません。

相続人全員の合意によって、遺言と異なる内容の遺産分割が認められる場合があります。

例えば、

  • 遺言では長男が自宅を取得することになっているが、実際には長女が同居しており、そのまま居住する方が適切な場合
  • 遺言では預金の取得者が指定されているが、相続人全員が均等に分けることを希望している場合
  • 遺言作成後に家族関係や財産状況が変化し、相続人全員が別の分け方を希望している場合

などです。

もっとも、すべての場合に自由に変更できるわけではありません。

例えば、

  • 遺言による遺贈がある場合
  • 遺言執行者が選任されている場合
  • 相続人以外の権利者が関係する場合

などは慎重な検討が必要になります。

そのため、遺言書がある場合には内容を十分に確認したうえで手続きを進めることが大切です。不明な点がある場合には、専門家へ相談することをおすすめします。


金融機関によっては遺産分割協議書が不要な場合もある

相続財産に預貯金や有価証券が含まれる場合、銀行や証券会社で名義変更や払い戻しなどの手続きを行うことになります。

金融機関によっては、遺産分割協議書を提出しなくても、

  • 相続人全員の署名
  • 実印による押印
  • 印鑑証明書
  • 金融機関所定の相続手続書類

などを提出することで手続きが可能な場合があります。

また、代表相続人が手続きを行う場合は、委任状の提出が求められることもあります。

ただし、必要書類や手続方法は金融機関ごとに異なります。

同じ銀行でも取扱方法が変更される場合がありますので、事前に確認することが大切です。


それでも遺産分割協議書を作成しておくことが望ましい理由

後日のトラブル防止につながる

金融機関の手続きが完了したとしても、相続人間で遺産の分け方について認識の違いが生じることがあります。

例えば、

  • 誰がどの財産を取得したのか
  • 特定の財産についてどのような合意があったのか

などが後から問題になることがあります。

遺産分割協議書を作成しておけば、相続人全員が合意した内容を客観的に確認することができます。

財産の全体像を整理できる

相続財産が不動産、預貯金、有価証券、自動車など多岐にわたる場合、取得者を一覧で整理することができます。

誰がどの財産を取得したのかを明確にすることで、その後の管理もしやすくなります。

将来の相続手続きで参考になる

将来、配偶者や相続人に新たな相続が発生した際に、

「前回の相続ではどのように財産を分けたのか」

を確認する場面があります。

遺産分割協議書が残されていれば、その経緯を確認する資料として役立ちます。


相続手続きは早めの準備が大切

遺産分割協議書を作成するためには、相続人全員の合意が必要です。

しかし実際には、

  • 相続人が遠方に住んでいる
  • 海外に居住している相続人がいる
  • 高齢の相続人がいる
  • 必要書類の収集に時間がかかる

といった事情により、想像以上に時間を要することがあります。

特に高齢の相続人については、判断能力に問題が生じると成年後見制度の利用が必要になる場合もあります。

そのため、相続が発生した際には、できるだけ早い段階から財産調査や必要書類の収集を進めることが重要です。


相続人同士で争いになった場合はどうする?

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって成立します。

そのため、一人でも反対する相続人がいる場合や、相続人同士で意見が対立している場合には協議が成立しません。

例えば、

  • 不動産を誰が取得するか決まらない
  • 財産の評価額について意見が分かれている
  • 特定の相続人が協議に応じない
  • 遺留分を巡って対立している

といったケースがあります。

このような場合、行政書士は相続人間で争いが生じている事案について、一方当事者の代理人として交渉を行うことはできません。

また、遺産分割調停や訴訟などの法的手続きへの対応は弁護士の業務となります。

相続人間で意見の対立が見られる場合や、遺産分割協議が進まない場合には、早めに弁護士への相談を検討することも重要です。


まとめ

遺産分割協議書は、相続人全員で決めた遺産の分け方を明確にするための重要な書類です。

金融機関によっては、所定の書類や相続人全員の署名・押印によって手続きが可能な場合もあります。しかし、後日のトラブル防止や相続内容の明確化という観点からは、遺産分割協議書を作成しておくことが望ましいでしょう。

また、遺言書が存在する場合であっても、相続人全員の合意によって遺言と異なる内容の遺産分割が認められる場合があります。ただし、遺贈や遺言執行者が関係する場合などは慎重な検討が必要となります。

さらに、相続人間で争いが生じている場合には、行政書士が代理人として交渉することはできません。必要に応じて弁護士への相談も検討しましょう。

遺産分割協議書は単なる手続書類ではなく、相続人全員の合意内容を形に残す大切な記録でもあります。

財産調査を十分に行い、相続人全員で内容を確認したうえで作成することが、円満な相続への第一歩となるでしょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

松原 巧

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