実印がないと相続手続ができない?終活の際に家族へ伝えておきたいこと

実印がないと相続手続ができない?終活の際に家族へ伝えておきたいこと

相続手続では、実印や印鑑証明書が必要になる場面が数多くあります。

しかし、普段の生活の中で実印を使う機会はそれほど多くありません。そのため、いざ相続が発生した際に「実印を持っていない」「印鑑登録をしていない」「海外に住んでいて印鑑証明書が取得できない」といった問題に直面することがあります。

また、預貯金や証券口座の相続では、相続人側の準備によって手続の負担や期間が変わることもあります。

今回は、相続手続と実印の関係、海外在住の相続人がいる場合の注意点、そして終活の際に家族へ伝えておきたいことについて解説します。

相続手続で実印が必要になる場面

相続が発生すると、預貯金の解約や不動産の名義変更など、さまざまな手続を進めることになります。

特に遺産分割協議を行う場合には、遺産分割協議書に相続人全員が署名し、実印を押印することが一般的です。

また、次のような手続でも実印や印鑑証明書が求められることがあります。

  • 遺産分割協議書の作成
  • 預貯金の相続手続
  • 証券会社の相続手続
  • 不動産の相続登記
  • 自動車の名義変更

認印では手続できないケースが多いため、成年の相続人は実印を準備しておくと安心です。

実印は15歳未満では登録できない

意外と知られていませんが、印鑑登録は原則として15歳未満の方は行うことができません。

そのため、未成年の子どもについて「相続に備えて実印を作っておかなければならない」と考える必要はありません。

未成年者が相続人になる場合

例えば父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人になった場合、遺産分割協議では利益が相反する可能性があります。

このような場合には、家庭裁判所で選任された特別代理人が必要になることがあります。

特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加するため、未成年者本人の実印が必要になることは通常ありません。

実印以外に準備しておきたいもの

相続手続を円滑に進めるためには、実印以外にも確認しておきたいものがあります。

印鑑登録証(カード)

実印を持っていても、印鑑登録証や印鑑登録カードの保管場所が分からなくなっていることがあります。

印鑑証明書を取得する際に必要になる場合がありますので、保管場所を確認しておきましょう。

(マイナンバーカードによるコンビニ取得の際は不要です。)

マイナンバーカード

住民票や印鑑証明書をコンビニで取得できる自治体も増えています。

相続手続では各種証明書が必要になるため、準備しておくと便利です。

本籍地の確認

相続手続では戸籍の収集が欠かせません。

しかし、自分の本籍地を正確に把握していない方も少なくありません。戸籍は本籍地の区役所等で取得できます。本籍地がどこかを確認しておくと、相続発生後の手続がスムーズになります。

相続人同士の連絡先

兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースでは、連絡が取りづらくなっていることがあります。

いざという時に困らないよう、家族の連絡先は整理しておくと安心です。

銀行口座

相続した預貯金は、最終的に相続人の口座へ振り込まれることになります。

金融機関によって取扱いは異なりますが、被相続人と同じ金融機関の口座を相続人が持っている場合には、手続が比較的スムーズに進むことがあります。

一方で、他行口座への振込となる場合には振込手数料が発生することもあります。

日頃から利用している金融機関を家族が把握しておくことも大切です。

証券口座

株式や投資信託などを相続する場合、相続人名義の証券口座への移管手続が必要になります。

そのため、相続人は被相続人と同じ証券会社に証券口座を開設することになります。

しかし、証券口座の開設には本人確認などが必要であり、手続完了まで数週間程度かかります。

相続が発生してから口座開設を始めると、その後の相続手続全体が長引く原因になることがあります。

被相続人が証券会社を利用している場合には、どの証券会社を利用しているのかを家族で共有しておくとよいでしょう。

海外に住んでいる相続人がいる場合の注意点

近年は国際結婚や海外赴任、海外就職などにより、相続人が国外に居住しているケースも珍しくありません。

ところが、日本国外では日本の印鑑登録制度を利用していないことが多く、日本の印鑑証明書を取得できない場合があります。

そのため、

  • 署名証明書
  • サイン証明書
  • 公証人による認証書類
  • 宣誓供述書(Affidavit)

などを利用して手続を進めることになります。

国や地域によって必要書類は異なる

海外在住者の相続手続では、居住国や地域によって利用できる制度が異なります。

例えば、

  • 韓国
  • 台湾
  • 中国
  • 香港
  • シンガポール
  • アメリカ
  • カナダ
  • オーストラリア

などでは、それぞれ署名証明や公証制度の仕組みが異なります。

また、必要となる書類は金融機関や法務局などの手続先によっても異なる場合があります。

「海外在住だからこの書類を取得すれば必ず大丈夫」というわけではなく、事前確認が重要です。

さらに、書類の取得や認証、国際郵便による送付などで時間がかかることも少なくありません。

終活の際には家族へ伝えておくことも大切

終活というと、遺言書や財産目録の作成に目が向きがちです。

しかし、実際に相続手続を進めるのは残されたご家族です。

相続手続では相続人に実印や印鑑証明書が必要になることがあること、海外に住んでいる相続人には追加の書類が必要になる場合があること、預貯金の受取口座や証券口座の準備によって手続期間が変わることなどを、元気なうちに家族へ伝えておくことをおすすめします。

特に海外在住のご家族がいる場合は、どの国に住んでいるのか、どのような証明書を取得できるのかを確認しておくことで、相続発生後の負担を軽減できる可能性があります。

相続対策は財産を整理することだけではありません。相続人がスムーズに手続を進められるよう必要な情報を共有しておくことも、大切な終活の一つと言えるでしょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

松原 巧

松原 巧