
相続財産の中でも、不動産は特に扱いが難しい財産です。
預貯金であれば比較的分けやすい一方、不動産は簡単に分割できません。そのため、相続人の間で意見が分かれたり、手続きを後回しにした結果、問題が複雑になったりすることがあります。
今回は、不動産相続で知っておきたい基本的な考え方について解説します。
不動産は分けにくい財産
預貯金であれば、相続人ごとに金額を分けることができます。
しかし、土地や建物はそう簡単ではありません。
例えば、実家を相続する場合、
- 今後も住み続けたい人
- 売却して現金化したい人
- 思い出があるので残したい人
など、それぞれの考え方が異なることがあります。
また、不動産は同じ地域であっても条件によって価値が異なります。
そのため、不動産相続では「公平に分けること」が預貯金より難しく、相続人同士の話し合いが重要になります。
相続すると何が起きるのか
不動産の所有者が亡くなった場合、名義は自動的には変わりません。
遺言書によって承継先が指定されている場合を除き、通常は遺産分割が終わるまで相続人全員が権利を持つ状態になります。
この状態は、最終的に誰が不動産を取得するのかが確定していないため、法的に不安定な状態ともいえます。
例えば、
- 売却したい人と残したい人がいる
- 相続人の一人と連絡が取れない
- 相続人の一人が亡くなり、さらに相続が発生する
といった状況になると、話し合いが難しくなることがあります。
実際に、相続手続きを行わないまま長期間放置した結果、当初は数人だった相続人が子や孫の世代まで広がり、権利関係が複雑になってしまうケースもあります。
そのため、相続人や相続財産を確認し、早めに遺産分割や相続登記を進めることが大切です。
相続登記について
令和6年4月から相続登記が義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
相続登記を行うことで、不動産の所有者が明確になり、将来の売却や活用もしやすくなります。
一般的には、
- 戸籍謄本等
- 遺産分割協議書
- 印鑑証明書
などが必要になります。
なお、登記申請そのものは司法書士の業務となります。
不動産を相続した後の選択肢
不動産を相続した後には、主に次のような選択肢があります。
そのまま住む
自宅であれば、そのまま住み続けるという選択があります。
売却する
売却して現金化すれば、相続人間で分けやすくなります。
賃貸として活用する
家賃収入が期待できますが、管理や修繕の負担も発生します。
共有名義のまま維持する
当面の解決策として共有にすることもあります。
もっとも、共有者の一人が亡くなるとさらに相続が発生するため、将来的に権利関係が複雑になる可能性があります。
空き家になった場合の負担
「とりあえず残しておこう」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、不動産を保有し続けるにはさまざまな負担があります。
- 固定資産税
- 建物の修繕費
- 草刈りや除雪などの維持管理費
- 定期的な見回りや管理の手間
さらに近年は、人件費や建築資材価格の上昇により、修繕費や解体費用も高騰しています。
今後インフレが続けば、建物の解体や処分にかかる費用はさらに増加する可能性があります。
一方で、地域によっては地価が上昇することも考えられます。
ただし、不動産の価値が上がる可能性だけでなく、維持費や税負担もあわせて考える必要があります。
固定資産税評価額の見直しによって、将来的に固定資産税等の負担が増える可能性もあります。
不動産を持ち続けるのか、売却するのかについては、「そのうち考えよう」と先送りせず、早めに検討しておくことが大切です。
家族で早めに話しておきたいこと
不動産相続は、相続が発生してから考えるよりも、生前から話し合っておく方がスムーズです。
例えば、
- 誰が住む予定なのか
- 売却する可能性があるのか
- 遺言書を作成するのか
- 家族は財産の内容を把握しているのか
といった点について話し合っておくだけでも、将来の負担を軽減できる可能性があります。
特に不動産は預貯金のように簡単に分けられないため、家族間の意思確認が重要になります。
FPとして考える不動産相続
相続対策というと、相続が発生した後の手続きをイメージする方が多いかもしれません。
しかし、本来は生前から準備できることもあります。
例えば、夫婦の居住用不動産については、一定の要件を満たすことで利用できる贈与税の配偶者控除(いわゆるおしどり贈与)があります。
夫に財産が集中している場合には、生前のうちに配偶者へ資産を移転することによって、将来の財産承継を検討しやすくなる場合があります。
また、相続税には配偶者の税額軽減がありますが、一次相続だけを見るのではなく、二次相続まで考えることも重要です。
一次相続では税負担が軽くなったとしても、配偶者に財産が集中した結果、二次相続で税負担が大きくなることがあります。
そのため、
- 配偶者の税額軽減
- 配偶者居住権
- 小規模宅地等の特例
- おしどり贈与
などの制度について、早い段階から知っておくことには大きな意味があります。
相続は単なる名義変更の手続きではありません。
不動産を誰が引き継ぐのか、どのように活用するのか、そして次の世代へどのように承継していくのか。
そのような視点で考えることが、将来の安心につながるのではないでしょうか。
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