行政書士は「営利企業」ではないのか――公務員の兼業申請で感じた法解釈上の違和感

公務員在職中、令和8年4月1日から新たに「職員の有する知識・技能をいかした事業」について、公務員の自営兼業制度の見直しが行われたことから、私は行政書士として活動するため、兼業申請を行いました。申請に当たって問題となったのは、国家公務員法103条との関係です。同条は、公務員が営利企業の役員等を兼ねることや、自ら営利企業を営むことを原則として制限しています。そこで私は、行政書士業を行うことについて、必要な手続を踏んで申請しました。
しかし、その申請は許可されませんでした。理由として示されたのは、行政書士法1条が行政書士の公共的使命を定めていることから、行政書士は国家公務員法103条にいう「営利企業」には当たらない、という趣旨の説明でした。
この説明を受けたとき、私は強い違和感を覚えました。行政書士法1条が、行政書士の制度目的として「国民の権利利益の実現に資すること」を掲げ、公共性が高いことはそのとおりです。しかし、公共性が高いことから直ちに「営利性がない」といえるのでしょうか。また、「営利企業」に当たらないという場合、問題にされているのは「営利」なのか、それとも「企業」なのかという点も、整理して考える必要があるように思います。


行政書士法1条だけで営利性を否定できるのか
行政書士法1条は、行政書士制度の目的を定める規定です。行政書士が、官公署に提出する書類等の作成や手続代理などを通じて、国民の権利利益の実現に寄与する専門職であることを明らかにしています。これは、行政書士が単なる私的利益の追求だけを目的とする存在ではなく、一定の公共性を持つ資格者であることを示すものといえます。
しかし、そこから直ちに「行政書士業には営利性がない」と結論づけることには飛躍があります。公共性を持つ職業であっても、報酬を得て、反復継続して業務を行う以上、それは社会の中で経済活動として機能しています。公共性と営利性は、排他的な概念ではありません。


「業とする」という文言の意味
同じく行政書士法1条の2及び1条の3には、行政書士が一定の業務を「業とする」と規定されています。この「業とする」という文言は、単発的・偶発的に行うことではなく、反復継続して行う職業的活動を意味すると解されます。そして、行政書士業務は通常、依頼者から報酬を得て行われます。
そうであるならば、行政書士業には、少なくとも経済活動としての側面があることは明らかです。行政書士が公共的使命を有するからといって、その業務が報酬を伴う職業的活動であるという性質まで消えるわけではありません。
むしろ、行政書士法が「業とする」という文言を用いている以上、行政書士業が継続的な業務として営まれることは制度上予定されていると見るべきです。資格者が専門的知識を用いて依頼を受け、書類作成や手続代理等を行い、その対価として報酬を受けます。この構造は、一般的な意味での事業活動と大きく異なるものではありません。


士業の公共性と経済活動性は両立する
行政書士に限らず、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士などの士業は、いずれも社会的・公共的な役割を担っています。これらの資格者は、法制度や行政手続、税務、労務管理などに関わり、国民や事業者の権利義務に深く関与します。その意味で、士業には公共性があります。
しかし同時に、多くの士業は独立開業し、依頼者から報酬を得て業務を行っています。事務所を構え、顧客を獲得し、業務を提供し、対価を受け取ります。その活動には、明らかに経済活動としての側面があります。公共性があるからといって、営利性や事業性が当然に否定されるわけではありません。
行政書士についても同じです。行政書士が国民の権利利益の実現に資する専門職であることは、行政書士業が報酬を得て反復継続して行われる職業的活動であることと両立します。むしろ、公共的使命を果たすためにこそ、専門職として継続的に業務を行い、その対価として報酬を得る仕組みが認められていると考えるべきではないでしょうか。


問題は「営利企業か否か」だけではない
もちろん、公務員の兼業規制には重要な意味があります。公務の公正性、公務員に対する信頼、職務専念義務を確保するため、兼業に一定の制約が課されること自体は当然です。特に、本人の職務と兼業先との間に利害関係がある場合や、兼業によって職務遂行に支障が生じる場合には、厳格な判断が必要になります。
しかし、その判断は、行政書士法1条の公共性だけを根拠に一律に行うべきではない。むしろ、実際にどのような業務を行うのか、報酬を得るのか、反復継続性があるのか、勤務時間と重複しないか、職務との利害関係がないか、公務の信用を損なうおそれがないかといった具体的事情を踏まえて判断されるべきである。
国家公務員の兼業制度においても、単に報酬の有無だけでなく、継続性・反復性、事業性、利害関係、公務への影響といった事情が重視されている。そうであれば、行政書士業についても、抽象的に「公共性があるから営利企業ではない」とするのではなく、具体的な活動実態に即して評価する必要がある。


私が感じた違和感
私は、開業しなければ受けることができない行政書士会が行っている研修の受講、開業しなければなれない特定行政書士及び申請取次行政書士の勉強をしたかったのですが兼業は認められませんでした。退職後、本格的に行政書士業務を行う際に、業務範囲を広げたかったのですが、希望は叶いませんでした。確かに都合のいい考えではあるのですが・・・
私は、行政書士の兼業が無条件に認められるべきだ、とは思っていません。公務員である以上、兼業が公務に影響しないかどうかは慎重に審査されるべきであるし、場合によっては認められないこともあり得る。ただ、行政書士法1条を根拠に、行政書士業の営利性を否定するという説明には納得し難いものがある。行政書士法1条は、行政書士の公共的使命を示す規定であって、行政書士業が報酬を得て行われる職業的活動であることを否定するものではないはずである。
行政書士法1条の2及び1条の3に「業とする」と明記されている以上、行政書士業には反復継続性と職業性が予定されている。その活動が報酬を伴うものであるならば、経済活動としての側面を正面から認めたうえで、公務員の兼業規制との関係を検討するのが自然ではないだろうか。~~~そして、私は退職し、行政書士事務所を開業することを決意しました。

申請が許可されなかったことに納得はしていませんが、自分のこれからの人生を考え、退職が一番と判断しました。この件については「許可」に拘りませんでしたが、私を信頼して依頼してくれるお客様のためには、とことん闘う覚悟、やり抜く覚悟はあります!最善の方法を一緒に考えさせて下さい。なんなりと、ご相談いただければ幸いです。

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「行政書士巧事務所ホームページ」

この記事を書いた人 Wrote this article

松原 巧

松原 巧